かと聞くのです。私の買うものの中《うち》には字引きもありますが、当然眼を通すべきはずでありながら、頁《ページ》さえ切ってないのも多少あったのですから、私は返事に窮しました。私はどうせ要らないものを買うなら、書物でも衣服でも同じだという事に気が付きました。その上私は色々世話になるという口実の下《もと》に、お嬢さんの気に入るような帯か反物《たんもの》を買ってやりたかったのです。それで万事を奥さんに依頼しました。
奥さんは自分一人で行くとはいいません。私にもいっしょに来いと命令するのです。お嬢さんも行かなくてはいけないというのです。今と違った空気の中に育てられた私どもは、学生の身分として、あまり若い女などといっしょに歩き廻《まわ》る習慣をもっていなかったものです。その頃の私は今よりもまだ習慣の奴隷でしたから、多少|躊躇《ちゅうちょ》しましたが、思い切って出掛けました。
お嬢さんは大層着飾っていました。地体《じたい》が色の白いくせに、白粉《おしろい》を豊富に塗ったものだからなお目立ちます。往来の人がじろじろ見てゆくのです。そうしてお嬢さんを見たものはきっとその視線をひるがえして、私の顔を見
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