と念を押した。
「どうも色々お世話になります」
父はこういった。そうしてまた昏睡状態に陥った。枕辺《まくらべ》を取り巻いている人は無言のまましばらく病人の様子を見詰めていた。やがてその中《うち》の一人が立って次の間《ま》へ出た。するとまた一人立った。私も三人目にとうとう席を外《はず》して、自分の室《へや》へ来た。私には先刻《さっき》懐《ふところ》へ入れた郵便物の中を開けて見ようという目的があった。それは病人の枕元でも容易にできる所作《しょさ》には違いなかった。しかし書かれたものの分量があまりに多過ぎるので、一息《ひといき》にそこで読み通す訳には行かなかった。私は特別の時間を偸《ぬす》んでそれに充《あ》てた。
私は繊維の強い包み紙を引き掻くように裂《さ》き破った。中から出たものは、縦横《たてよこ》に引いた罫《けい》の中へ行儀よく書いた原稿|様《よう》のものであった。そうして封じる便宜のために、四《よ》つ折《おり》に畳《たた》まれてあった。私は癖のついた西洋紙を、逆に折り返して読みやすいように平たくした。
私の心はこの多量の紙と印気《インキ》が、私に何事を語るのだろうかと思って驚いた
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