を聞いたかという意味であった。私には説明を待たないでもその意味がよく解っていた。
「お前ここへ帰って来て、宅《うち》の事を監理する気がないか」と兄が私を顧みた。私は何とも答えなかった。
「お母さん一人じゃ、どうする事もできないだろう」と兄がまたいった。兄は私を土の臭《にお》いを嗅《か》いで朽ちて行っても惜しくないように見ていた。
「本を読むだけなら、田舎《いなか》でも充分できるし、それに働く必要もなくなるし、ちょうど好《い》いだろう」
「兄さんが帰って来るのが順ですね」と私がいった。
「おれにそんな事ができるものか」と兄は一口《ひとくち》に斥《しりぞ》けた。兄の腹の中には、世の中でこれから仕事をしようという気が充《み》ち満《み》ちていた。
「お前がいやなら、まあ伯父さんにでも世話を頼むんだが、それにしてもお母さんはどっちかで引き取らなくっちゃなるまい」
「お母さんがここを動くか動かないかがすでに大きな疑問ですよ」
 兄弟はまだ父の死なない前から、父の死んだ後《あと》について、こんな風に語り合った。

     十六

 父は時々|囈語《うわこと》をいうようになった。
「乃木大将《のぎた
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