からこんな事をいった。先生から明瞭《めいりょう》な手紙の来ない以上、私はそう信ずる事もできず、またそう口に出す勇気もなかった。それを母の早呑《はやの》み込《こ》みでみんなにそう吹聴《ふいちょう》してしまった今となってみると、私は急にそれを打ち消す訳に行かなくなった。私は母に催促されるまでもなく、先生の手紙を待ち受けた。そうしてその手紙に、どうかみんなの考えているような衣食の口の事が書いてあればいいがと念じた。私は死に瀕《ひん》している父の手前、その父に幾分でも安心させてやりたいと祈りつつある母の手前、働かなければ人間でないようにいう兄の手前、その他《た》妹《いもと》の夫だの伯父《おじ》だの叔母《おば》だのの手前、私のちっとも頓着《とんじゃく》していない事に、神経を悩まさなければならなかった。
父が変な黄色いものも嘔《は》いた時、私はかつて先生と奥さんから聞かされた危険を思い出した。「ああして長く寝ているんだから胃も悪くなるはずだね」といった母の顔を見て、何も知らないその人の前に涙ぐんだ。
兄と私が茶の間で落ち合った時、兄は「聞いたか」といった。それは医者が帰り際に兄に向っていった事
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