聞いても解《わか》らないというのであった。私から見ればなにも無理に先生を兄に理解してもらう必要はなかった。けれども腹は立った。また例の兄らしい所が出て来たと思った。
先生先生と私が尊敬する以上、その人は必ず著名の士でなくてはならないように兄は考えていた。少なくとも大学の教授ぐらいだろうと推察していた。名もない人、何もしていない人、それがどこに価値をもっているだろう。兄の腹はこの点において、父と全く同じものであった。けれども父が何もできないから遊んでいるのだと速断するのに引きかえて、兄は何かやれる能力があるのに、ぶらぶらしているのは詰《つま》らん人間に限るといった風《ふう》の口吻《こうふん》を洩《も》らした。
「イゴイストはいけないね。何もしないで生きていようというのは横着な了簡《りょうけん》だからね。人は自分のもっている才能をできるだけ働かせなくっちゃ嘘《うそ》だ」
私は兄に向かって、自分の使っているイゴイストという言葉の意味がよく解《わか》るかと聞き返してやりたかった。
「それでもその人のお蔭《かげ》で地位ができればまあ結構だ。お父《とう》さんも喜んでるようじゃないか」
兄は後
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