ン》ノ焼芋《やきいも》ノ味ハドンナカ聞キタイ。
不折ハ今|巴里《パリ》ニ居テコーラン[#「コーラン」に傍線]ノ処へ通ッテ居ルソウジャナイカ。君ニ逢《お》ウタラ鰹節一本贈ルナドトイウテ居タガ、モーソンナ者ハ食ウテシマッテアルマイ。
虚子ハ男子ヲ挙ゲタ。僕ガ年尾[#「年尾」に傍線]トツケテヤッタ。
錬郷死ニ非風死ニ皆僕ヨリ先ニ死ンデシマッタ。
僕ハ迚《とて》モ君ニ再会スル※[#コト、1−2−24]《こと》ハ出来ヌト思ウ。万一出来タトシテモ其時ハ話モ出来ナクナッテルデアロー。実ハ僕ハ生キテイルノガ苦シイノダ。僕ノ日記ニハ「古白曰来」ノ四字ガ特書シテアル処ガアル。
書キタイ※[#コト、1−2−24]《こと》ハ多イガ苦シイカラ許シテクレ玉エ。
明治卅四年十一月六日灯下ニ書ス
[#地より2字上げ]東京 子規 拝
倫敦《ロンドン》ニテ
漱石 兄
此手紙は美濃紙へ行書でかいてある。筆力は垂死の病人とは思えぬ程慥《たしか》である。余は此手紙を見る度《たび》に何だか故人に対して済まぬ事をしたような気がする。書きたいことは多いが苦しいから許してくれ玉え[#「書きたいことは多いが苦し
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