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煩悩を煩悩せずば(いゝ歌だ!)
煩悩は煩悩ながら煩悩はなし
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空[#「空」に白三角傍点]、それは煩悩がなくなつた境地だ。
いや/\、菩提に囚はれない境地だ。
執着するなよ!
七時半の列車で出発、忠彦君に送られて、お土産として、酒三本、煙草一罐、そして小郡までの切符!
どうぞ、どうぞ、幸福に、幸福に(不幸がすぐ彼を襲うたとは!)。
炎天かゞやく。
九時半広島安着、黙壺居を訪ねて、また甘やかされた。
共にうち連れて、市中見物、生ビールとトンカツ、等々等。
旅といふものは、旅人の心は――
酒、酒、酒。
澄太君の友情に甘える。
憂欝、哀愁、苦脳[#「脳」に「マヽ」の注記]はてなし。
身辺整理。

 七月廿一日

ブランク、ブランク、いつさいがつさいブランクで。――

 七月廿二日[#「七月廿二日」に二重傍線]

憂欝たへがたし、気が狂はないのが不思議だ。
夜行で皈庵。
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大阪――広島
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・たれもかへる家はあるゆうべのゆきき
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