/\として十分
すずしく風は萩の若葉をそよがせてそして
そよかぜの草の葉からてふてふうまれて出た
  無坪兄に
手が顔が遠ざかる白い点となつて
旅もをはりのこゝの涼しい籐椅子
死にそこなうて山は青くて
  螻子君に
朝風すずしくおもふことなくかぼちやの花
朝の海のゆう/\として出船の船
ヱンヂンは正しくまはりつゝ、朝
ほんにはだかはすずしいひとり
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 七月十九日[#「七月十九日」に二重傍線](続)

老鶯しきりに啼く、島の平和。
島もうるさいね、人間のゐるところ、そこは葛藤のあるところ。
昼寝の夢はどんなであつたらう!
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水音の
こゝろのふるさと
波がしろくくだけては
けふも暮れゆく
[#ここで字下げ終わり]
待てば海路のよか船があつた、紫丸に乗せてもらうて竹原へもどることが出来た。
夕凪の内海はほんにうつくしい。
一期一会、いつも、いつも一期の会。
夜は螻子居の家庭をうらやみつゝ寝てしまつた。

 七月廿日[#「七月廿日」に二重傍線] 晴。

いよ/\皈ります、随縁去来[#「随縁去来」に傍点]だ。
煩悩、煩悩、煩悩即菩提、菩提もなくなれ
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