たう。

 七月十五日[#「七月十五日」に二重傍線] 晴。

朝の海がだいぶ私をのんびりさせた、朝月のこゝろよさ。
二時、竹原着、螻子居の客となる。
螻子君夫妻の温情は全心全身にしみこんだ。
私はいつも思ふ――
私は何といふ下らない人間だらう、そして友といふ友はみんな何といふありがたい人々だらう。

 七月十六日[#「七月十六日」に二重傍線] 晴。

滞在。
朝の散歩のこゝろよさ。
ごろ寝して読みちらす、まさに安楽国である。
朝酒、昼酒、そしてまた晩酒、けつかう、けつかう。
打水、そこから涼しい風、煽風器の殺風景な風はたゞ風といふだけ。

 七月十七日[#「七月十七日」に二重傍線] 快晴。

ひとりぶら/\的場海岸へ、そこで今年最初の海水浴、ノンキだね。
夾竹桃の花は南国的、泰山木の花は男性的。
身辺整理、やうやくにして落ちつく。

 七月十八日[#「七月十八日」に二重傍線] 晴。

散歩、鳩、雀、月草。……
しばらくにして。……
午前一時発動汽[#「汽」に「マヽ」の注記]船で生野島へ渡る、Kさん、奥さん、お嬢さん、お嬢さんも久しく[#「く」に「マヽ」の注記]に、五人、風もよろしく人も
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