れからそれへ
・更けてもう/\とわきあがるもののしゞま
   万座峠
・霧の底にて啼くは筒鳥
・山路なつかしくバツトのカラも
・ふきのとうも咲いてほほけて断崖
・ごろりと岩が道のまんなかに
・あんなところに家がある子供がゐる犬がほえる(追加)
   内山へ
・霧雨しくしく濡れるもよろしく
・けふは街へ下る山は雨
・八重ざくらうつくしく南無観世音菩薩像
・かつこう啼いて霽れさうなみどりしづくする
・こんやの寝床はある若葉あかるい雨
・このみちがをなごやへ霽れさうもないぬかるみ
・こゝろおちつかない麦の穂のそよぐや
・つめたい雨が牡丹に、牡丹くづれる
・ころびやすうなつたからだがころんだままでしみ/″\
・明けるとかつこう家ちかくかつこう
・すぐそこでしたしや信濃路のかつこう
・崖から夢のよな石楠花で
・ゆふべ啼きしきる郭公を見た
・観てゐる山へ落ちかゝる陽を見る
・これが胡桃といふ花若葉くもる空
・ちよいちよい富士がのぞいてまつしろ
・つかれもなやみもあつい湯にずんぶり(追加)
[#ここで字下げ終わり]

 五月廿六日[#「五月廿六日」に二重傍線] 曇、后雨。

未明起きてすぐ湯にはいる
前へ 次へ
全80ページ中57ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング