濃路、その他にて)
また一枚ぬぎすてる旅から旅へ
水の上はつきり春の雲
はてなき旅の遠山の雪ひかる
あれがふるさとの山なみの雪ひかる
街の雑音しづもれば恋猫の月
枯葦の一すぢの水のながれ
春風のテープちぎれてたゞよふ
手から手へ春風のテープ
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三月一日[#「三月一日」に二重傍線] 緑平居、雪、霜、霙。
緑平老は私の第一の友人だ。
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遠山の雪ひかるどこまで行く
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三月二日
今日は事務家となつて句集発送。
雪、雪、雪だつた。
ヘツドランプ[#「ヘツドランプ」に傍点]をうたふ。
三月三日
酔うて、ぬかるみを歩いて、そして、また飯塚へ、それから二瀬へ。
逢うてはならないKに逢ふたが。
とろ/\どろ/\、ほろ/\ぼろぼろの一日だつた。
死に場所が、死に時がなか/\に見つからないのである!
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ふりかへるボタ山ボタン雪ふりしきる
雪ふる逢へばわかれの雪ふる
[#ここで字下げ終わり]
三月四日 岔水居。
何といふ憂欝、歩く外ない。
若松へ、多君に事情を打明けて旅費を借る、そして門司へ。
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