貰ふ、有難かつた、ルンペン君は驚いてゐる。
海ノ口からまた歩いて海尻、そしてやうやく小海駅、こゝでルンペン君に別れる、汽車は千曲川に沿うて下りやがて岩村田町、江畔老の無相庵に客となる、家内中で待つてゐて下さつた、涙ぐましくもうれしかつた。
おゝ浅間! 初めて観るが懐かしい姿。
江畔老の家庭はまた何といふなごやかさであらう、父草君が是非々々といつて按摩して下さる、恐れ入りました。
五月十日[#「五月十日」に二重傍線]
夜来の雨は霽れて、空の色が身にしみる、雪の浅間の噴烟ものどかだ。
炎の会句会、粋花、如風、等々の同人に紹介される。
山国の春は何もかもいつしよにやつて来て、とても忙しい、人も自然も。
手打蕎麦――いはゆる信州蕎麦の浅間蕎麦――その味は何ともいへない、一茶がおらがそば[#「おらがそば」に傍点]と自慢したゞけはある。
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逢つて何よりお蕎麦のうまさは
[#ここで字下げ終わり]
鼻頭稲荷の境内で記念撮影。
江畔老から牧水の事をいろ/\聞く。
うれしくあたゝかくやすらけく寝たり起きたり、我がまゝをさせていたゞく。
五月十一日[#「五月十一日」に二重傍線
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