線] 廿八日[#「廿八日」に二重傍線] 曇――雨。
法衣も網代笠も投げ捨てゝ、浅草で遊んだ、遊べるだけ遊んだ。
浅草は好きだ、愉快な遊楽場である、私のやうな人間にはとりわけて。
四月廿九日[#「四月廿九日」に二重傍線] 雨。
今日も浅草彷徨。
四月三十日[#「四月三十日」に二重傍線] 曇。
おなじく。
労れて憂欝になる、金もなくなつたのだが。
五月一日[#「五月一日」に二重傍線] 曇。
東京を横断した、もちろん歩いて。
社に戻つて泊る。
五月二日[#「五月二日」に二重傍線] 曇。
いよ/\東京をあとに、新宿から電車で八王子へ。
多摩少年院に三洞君を訪ねる。
夜は三洞居で丘の会句会。
今日、久しぶりに豊次君に会つて話した、あの頃の事はいつもなつかしい、それにしてもお互に変つたものである。
武蔵野は好きだ、丘、流、草、ことに栃の若葉と春の竜胆とはよかつた。
ゆつくり寝せて貰つた。
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・どこかに月あかりの木の芽匂ふなり
・旅もなぐさまないこゝろ持ちあるく
[#ここで字下げ終わり]
五月三日[#「五月三日」に二重傍線]
丘の家はしづかである
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