君、新五郎君、――鎌倉同人はほんたうになごやかだ。
波音があたゝかだつた。
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ヒヤとおヒヤ――前者は冷酒、後者は水。
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 四月四日[#「四月四日」に二重傍線] 晴。

かたじけなくも、もつたいなくも、朝湯にはいつてから朝酒をいたゞく。
蜻郎君来訪。
三人連れで散歩、光明寺大聖閣、’’’’幡宮、建長寺、円覚寺、長谷の大仏。……
冬青居徃訪。
夜は南浦園で句会、支那料理がおいしかつた。
まことによい日よい夜であつた。
層雲社から電報、明日の句会へ出席せよといふので。――

鎌倉風景。――
東京の印象。――
東京は広い。
伊豆遊吟。
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沼津――東京。
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朝の富士は白いあたまの春の雲
松の木あざやかに富士の全貌
ぶらんこぶら/\若葉照る
街の騒音何の木か咲いてゐる
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東京をうたふ。
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さくらちる富士がまつしろ
さくら咲いてまた逢うてゐる
旅ごゝろかなしい風がふきまくる
ぼう/\としてあるくいつしか春
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   (追加)
 蘭竹かれ/″\の風
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