なお客さんとして。
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おちついてしづけさは青木の実
(比古君か印君に)
鎧着ておよろこび申す春の風吹く
(弘川寺)
春の山鐘撞いて送られた
けふのよろこびは山また山の芽ぶく色
ちんぽこの湯気もほんによい湯で
(京都)東山
・旅は笹山の笹のそよぐのも
まるい山をまへに酔つぱらふ
松笠の落ちてゐるだけで
こんやはこゝで雨がふる春雨
・旅の袂草のこんなにたまり
ぬかるみも春らしく堀[#「堀」に「マヽ」の注記]りかへしてゐる
(宇治)
うらゝかな鐘をつかう
御堂のさびも春のさゞなみ
・春日へ扉ひらいて南無阿弥陀仏
・たゞずめば風わたる空の遠く遠く
(月ヶ瀬へ)
落葉ふる岩が腰かけとして
・どこで倒れてもよい山うぐひす
落葉してあらはなる巌がつちり
蕗のとうあしもとに一つ
後になり先になり梅にほふ
(伊勢神宮、五十鈴川)
そのながれにくちそゝぐ
たふとさはまつしろなる鶏の
若葉のにほひも水のよろしさもぬかづく
(二見ヶ浦)
春波のおしよせる砂にゑがく
旅人として小雪ちらつくを
(津にて
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