――そこから私は身心の平静を与へられる。
酒を飲むよりも水を飲む、酒を飲まずにはゐられない私の現在ではあるが、酒を飲むやうに水を飲む、いや、水を飲むやうに酒を飲む、――かういふ境地でありたい。
作るとは無論、俳句を作るのである、そして随筆も書きたいのである。

 一月一日[#「一月一日」に二重傍線] 二日[#「二日」に二重傍線] 三日[#「三日」に二重傍線] 四日[#「四日」に二重傍線] 五日[#「五日」に二重傍線]……岡山、稀也居。

夫、妻、子供六人、にぎやかだつた。
幸福な家庭。
たいへんお世話になつた。
あんまり寒いので、九州へひきかへして春を待つことにした。
竹原の小西さん夫婦、幸福であれ。
私は新らしい友人を恵まれた。

 二月一日[#「二月一日」に二重傍線] 澄太居。

澄太君は大人である、澄太君らしい澄太君である。
私は友として澄太君を持つてゐることを喜び且つ誇る。
黙壺居。
黙壺君も有難い友である。
初めてお目にかゝつた小野さん夫婦に感謝する。
広島の盛り場で私は風呂敷を盗まれた。
日記、句帖、原稿――それは私にはかけがへのないものであり、泥坊には何でもないものである
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