入を出して着た。
腹が空つては句も作れない、今日はあたりまへに三度の御飯を食べた、朝のお菜は筍、昼は胡瓜、晩は豆腐、これでも私には御馳走だ!
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   今日の食費
一金拾六銭  米麦代
一金五銭   副食物代
  合計二十一銭、一食七銭也。
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 六月廿六日[#「六月廿六日」に二重傍線] 快晴。

早起、梅雨晴、どうやら梅雨もあがつたらしい。
今日も郵便は来ないのか、誰か来ないかな。
午前、暮羊君徃訪、酒によばれ新聞を貸して貰ふ。
午後、暮羊君来訪、四方山話。
散歩がてらポストへ、そして……あゝ。……

 六月廿八日[#「廿八日」はママ] 晴。

――どんなに私が愚劣であつたかは、事務室へまで押しかけて、かつて怒つたことのない樹明君を怒らしたことでも解る、何といふ愚劣だらう、あゝ私は樹明君に何と詫びたらよからう。――
乱酔して、昨夜も 今夜もW店に倒れてゐた。

 六月廿八日[#「六月廿八日」に二重傍線] 晴。

庵中独坐、自責に堪へないで苦悩するばかりだつた。

 六月廿九日[#「六月廿九日」に二重傍線] 晴。

自省自戒。
妄執を払拭せよ
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