もないが、牧水の門人としてのMさんの心意気が見えてうれしい、殊に傍書の「白玉の」の歌はうれしい。
昨日とおなじバスで柳井へ戻り、文友君の店を襲うた、そしてあたゝかい歓待をうけた、ありがたかつた。
六時の汽車で運ばれて、無事帰庵、めでたし/\。
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帰来無別事
雑草茫々
浮塵寂々
中国のよろしさ
ありがたい人情
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六月五日[#「六月五日」に二重傍線] 曇。
更けて戻つて、そのまゝ寝た。
何といふ寂しさだらう。
どこにゐても落ちつけない私ではある。……
六月六日[#「六月六日」に二重傍線] 晴、曇、晴、曇。
Mさんから貰つて戻つた酒があるので樹明君を招待する、折よく敬君も一樽持参で来てくれて、久しぶりに三人で快飲歓談した、かういふ会合が人生にめつたにあるものではない、うれしかつた、ことにおとなしくこゝろよく別れたのがよかつたよかつた!
六月七日[#「六月七日」に二重傍線]――十日[#「十日」に二重傍線]
――なやましい、せつないといふより外はなかつた、私は私を見失つてしまつた、ぢつと死を見つめてゐた。――
六
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