月十一日[#「六月十一日」に二重傍線] 曇、梅雨入。

やつと起きあがつて、身のまはりをかたづける。
敬君、出張の途中ちよつと来庵。
街へ出かける、うどん玉でも買うて来て食べよう。
胡瓜は一本だけ助かつて、四本は枯れてしまつた、肥料が不足なのか、それとも足りすぎたのか。
雑草がやたらにはびこる、荒地野菊ののさばりざまはどうだ。
螢がとぶ、こほろぎが鳴く。
筍がによき/\のぞきだした。
夕方、暮羊君来庵。

 六月十二日[#「六月十二日」に二重傍線] 梅雨らしく。

早起、身辺整理。
落ちついて紫蘇茶一杯。
今日もうどん。
仔を奪はれて、下の家の牛が悲しい声で鳴きつゞけてゐる、主人もいぢらしく思うて、連れだして草をたべさせてゐる。
降る降る、漏る漏る。
……やりきれなくなつて出かける、むちやくちやに飲み歩くほどに、トラどころぢやないタンクになつてしまつた。……

 六月十三日[#「六月十三日」に二重傍線] 雨。

動けない、食べないで寝てゐた。

 六月十四日[#「六月十四日」に二重傍線] 曇。

ぢつとしてゐられなくなり、農学校へ出かけて、みんないつしよに飲む、酔うてW店に泊つた。

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