がだん/\家ちかく身ぢかく来て鳴きつゞける、しみ/″\とした気分で聴いてゐる。
蟻よ、君の勤勉には頭がさがるが、家の中まではいつてくれるな、からだを螫さないやうに頼むよ。
母蜘蛛よ、子袋は重からうな、大切にしなさい。
――無くなつた、やつと見つかつた、ほつとした、それは巻煙草一本のゆくへである、――神経衰弱的動作はよろしくない。――
暮れて暮羊君来庵、先夜の連中に対して不平をならべる、近日、飲み直すことにする、何とか彼とか、酒飲は酒を飲む機会と口実とをつかむものである!

 七月廿一日[#「七月廿一日」に二重傍線] 晴。

沈静、句稿整理。
暮羊居から新聞を借りて読む、婦人公論も。
まつたく土用だ、よい暑さだ!
夕風に吹かれて散歩、飲みたくなつて、銭はないけれど、Wさんを訪ねて、飲まして貰ふ、酔つぱらふ、でも戻ることは戻つた、こけつまろびつで。――
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“諸行無常”
“木魂”

随処作空[#「空」に「マヽ」の注記] 立処皆真
  (臨済)
・老木挽さんがいふ――
・山の子[#「山の子」に傍点]は山で。――
[#ここで字下げ終わり]

 七月廿二日[#「七月廿二日」に
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