の六月十七夜、椹野河原は人出が多からう、今年は煙火の催物はないが。
近在散歩、歩けばずゐぶん暑い。
ふと気づくと、縞萱を盗み切られてゐる、惜しいと思ふよりも嫌な気がする。
[#ここから1字下げ]
・関東震災遺聞
・H老人とマツチ
・K夫人と水道
・汁かけ飯
・感謝、水、米、生命
 惜しむのではない、尊ぶのである。
 物を大切にする心[#「物を大切にする心」に傍点]
[#ここで字下げ終わり]

 七月十五日[#「七月十五日」に二重傍線] 曇、晴。

早起、読書、思索、句作、散歩。――
曇ると梅雨らしいが、晴れると炎天だ。
今日もポストまで出かける、ついでに新聞を借りて読む。
人さま/″\といふ感が深い。
ポストへ、アメリカ行の小包が入国拒絶で返つて来たので(茶の実を入れてあつたので)、不快を覚えたが、入浴してさつぱりと忘れてしまうことが出来た。
夕方、敬君来、つゞいて樹明来、暮羊来、お土産のハムを下物におもしろく飲み、めづらしく句を作つたが、三人いつしよに街へ出かけて、K屋、F屋とほつつき歩いて、みんなだらしなくなつた、先づ敬君が行方不明、樹明君が雲隠れ、そして虎になつた暮君を虎になりた
前へ 次へ
全31ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング