とりたくないものだ、朝酒の御馳走をいたゞく。
落ちついて読書。
欝欝たへがたくして、――酒まで苦い!
七月九日[#「七月九日」に二重傍線] 晴。
朝寝だつた、霄[#「霄」に「マヽ」の注記]れわたつた大空を昇る太陽!
いよ/\梅雨もあがつたらしい、暑くなつた、すこしぢたばたすると汗びつしよりになる、いよ/\夏だ。
旅、旅、行乞、行乞、山頭火、山頭火。
愛国婦人会の本部から来信、傷病将士慰安のために書画展覧会を開催するから、彩筆報国の意味で寄贈せよとの事、私は喜んで、ほんたうに喜んで寄贈する、それだけでも私の自責の念はだいぶ救はれる、ありがたいと思ふ。
心も軽く身もかろく、あたりを整理する。
ちよつと街へ出かけて、米と油を買ふ。
もう裸がよくなつた、裸で勉強する。
まつたく不眠、蛙のコーラスも悪くないな。
七月十日[#「七月十日」に二重傍線] 晴――曇――雨。
未明起床、夜が朝となる景象を観賞する、不眠の余得とでもいはうか。
早朝、訪問者があつて、風呂の売物はないかと訊ねる、それも面白かつた。
今日も好晴(夕方くづれたけれど)、炎天らしくなつて照りつける、私は冬が嫌ひなだけ夏が
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