ばならない[#「しなければならない」に傍点]。
手紙を書く、樹明君へ、そしてKへ、書きをへてほつとした、こんな手紙は書きたくない、書いてはならない。
ポストへ、五日ぶりの外出、W店で飲む、空腹と睡眠不足のためだらう、たいへん酔うた、酔うて彷徨した、とうたう倒れてしまつた。……

 七月三日[#「七月三日」に二重傍線] 晴――風――曇。

朝酒一本飲んで戻つた。
戦時的色彩が日にまし濃厚になる、私もひし/\と時局を感じる、しみ/″\戦争を感じる。
土方母堂、そしてリユシコフ将軍の新聞記事が胸をうつた、あゝ人間。
自然はよいかな[#「自然はよいかな」に傍点]、芸術はありがたいかな[#「芸術はありがたいかな」に傍点]。
[#ここから1字下げ]
山頭火に与ふ
  酔中の自己打診
     自己批判
     自己忠告
生死の一線
  彷徨
  超越
  逍遙
[#ここで字下げ終わり]

 七月四日[#「七月四日」に二重傍線] 曇、時々微雨。

早起したが食べるものはない、番茶を飲むだけ。
絶食、――思索、――読書、――句作。
Kから女子出産、母子共健全とのたよりがあつた、めでたしめでたしと独り
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