て、ただ味わいたい、ただ愛したい。
       ○
 片田舎の或る読者から観て――その読者の受ける気分とか感じとか心持とかいうものによって、日末[#「末」に「ママ」の注記]現代の文学雑誌及び文学者を二つのサークルに分つことが出来る。
 スバル、白樺、三田文学、劇と詩、朱欒。永井荷風氏、吉井勇氏、北原白秋氏、秋田雨雀氏、上田敏氏、小山内薫氏、鈴木三重吉氏。……
 早稲田文学、文章世界、帝国文学、新小説。島村抱月氏、田山花袋氏、相馬御風氏、正宗白鳥氏、馬場孤蝶氏、森田草平氏。……
       ○
 現代の日本文明を呪咀して、江戸文明に憧憬し仏蘭西文明を駆[#「駆」に「ママ」の注記]歌する荷風氏。現実の醜悪を厭うて夢幻に遁れんとする未明氏。温雅淡白よりも豊艶爛熟を喜ぶ白秋氏。
 或る意味に於て、すべての人間はアイデアリストである。ドリーマーである。ロマンチケルである。アナクロニズムといい、エキゾーチシズムという語は色々な、複雑な意味を持っていると思う。
       ○
 俳壇の現状は薄明りである。それが果して曙光であるか、或は夕暮であるかは未だ判明しない。
 俳句の理想は俳句の滅亡であ
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