俳句に於ける象徴的表現
種田山頭火

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【テキスト中に現れる記号について】

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 井泉水氏は印象詩乃至象徴詩としての俳句について屡々語られた。しかし俳句に於ける象徴の本質に就ては説かれない。筆端が時々此問題に触れたとも言うべき程である。私は此の根本的説明に接するを待つよりも、こういう問題はお互に協力して研究すべきものではないかと思う。
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病雁の夜寒に落ちて旅寝かな        芭蕉
僅かの花が散りければ梅は総身に芽ぐみぬ  井泉水
わが足跡人生ひてわれにつゞく朧      地橙孫
陽の前に鳥ないて安らかな一日       鳳車
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 これらの句を読んだ時、私は或る物を掴んだように思うた。私の心がぱっと光輝したように感じた。かかる傾向は層雲を中心とする人々ばかりの間に起ったのではか[#「か」に「ママ」の注記]い。他の二三氏によっても試みられつつある。
 象徴(symbol)が符号(sign)と同じ意味であった時代は既に過ぎて了った。象徴は生命の刹那的
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