たがつてゐる
 塩湯はよろしく春もしだいにととなふ景色
  福沢先生旧邸
 その土蔵はそのまゝに青木の実
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 三月十七日 日本晴、宇佐。

一片の雲影もない快さ、朝湯朝酒のうれしさ、いよ/\出発、宇平さん、二丘さん、昧々さん、ありがたう、ありがたう、ありがたう。
俳諧乞食業[#「俳諧乞食業」に傍点]は最初から失敗した!
途中、二三杯ひつかける、歩けなくなつて、宇佐までバス、M屋といふ安宿に泊る、よい宿であつた、深切なのが何よりもうれしい、神宮に参拝して祈願した、神宮は修理中。
宇佐風景、丘、白壁、そして宇佐飴を売る店。
ふんどし異変[#「ふんどし異変」に傍点]、山頭火ナンセンスの一つ、私としては飲み過ぎた祟りであり、田舎の巡査としては威張りたがる癖とでもいはう、とにかく、うるさい世の中だ、笑ひたくて笑へない出来事であつた。
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  自嘲
・旅も春めくもぞもぞ虱がゐるやうな
・春のほこりが、こんなに子供を生んでゐる
・街をぬけると月がある長い橋がある
  宇佐神宮
・松から朝日が赤い大鳥居
・春霜にあとつけて詣でる

 水をへだててをとことを
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