も頂戴した。
四時頃出立(鏡子君の温情に改めて感謝する)、警察署に星城子君を訪ねたが不在、雲平居は帰途立寄ることにして、電車で戸畑へ。
多々桜居で、奥さんのなげきを聴く(多々桜君の病状について)、同情に堪へない、すぐ若松病院へ行く。
四階の狭い病室、寝台に横はつたまゝで、附添婆さんから夕飯を食べさせてもらつてゐる多々桜君に逢ふ、顔色は予期したほど悪くないので安心した、二時間あまり話す、私一人がおしやべりしたことである。
暮れたけれど月があるので、バスで蘇葉居へいそぐ、折よく在宅、しばらく話したが、何となく身心が落ちつかないので、バスでまた駅まで引返し安宿に泊つた、歩いて飲んで寝た、夜中に臨検があつた。
今日は気持のよい娘を三人見た、バスガール、バアガール、そして電車の乗客。
誰もが戦闘帽[#「戦闘帽」に傍点]をかぶつてゐる、それも非常気[#「常気」に「マヽ」の注記]分を反映してゐてわるくはないけれど、おなじ色に塗りつぶされたゞけの世間のすがたはあまりよくはなからう。
――あれは何でせう?(一杯機嫌の私)
――お月さんですよ[#「お月さんですよ」に傍点]!(街の若い人)
これは若松に於け
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