い、ちしやに味噌をつけて食べる、うまい、何もかもうまいうまい!
夕方、野を逍遙して、野の花[#「野の花」に傍点]を観賞した、すみれ、きんぽうげ、菜の花、紫雲英、とり/″\にうつくしい、青草もうつくしい、虫もうつくしい。
今日はSを訪ねたいと思つたが、銭がないので止めた、骨肉といふものは離れてゐるとなつかしく逢へば嫌になる、そこに人生のなやみがある。……
寝苦しく悪夢に襲はれどほしだ。

 四月廿日[#「四月廿日」に二重傍線] 曇。

小鳥の歌のほがらかさ、椿もをはりのうつくしさ。
――自覚自信――自粛自戒。――
今日は陰暦の三月廿日、明日へかけて秋穂地方は賑ふだらう、私も巡拝するつもりだつたが、先日の浪費で、その余裕をなくしてしまつた。
散歩、農学校に寄つて新聞を読ませて貰ふ、新聞を読まない日は飯を食べないやうな感じ。
近来痛切に自然の理法[#「自然の理法」に傍点]といふものを感じる、生々流転の相[#「生々流転の相」に傍点]を観じる。……
石油が切れたので宵から寝る、暗闇で句を作つたり直したりしてゐるうちに、いつとなく睡つた、そして夢中なほ作つたり直したりした。
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