来庵、うれしい酒盛が始まつた、酔うたよ、酔うたよ、愉快だ、愉快だ。
ほんにぐつすり睡つた、ふと眼覚めると雨の音、まことによい夜明であつた。
――私はいよ/\重大決意をした、――いさぎよく其中庵を解消して[#「其中庵を解消して」に傍点]、再び行乞流転の旅人[#「行乞流転の旅人」に傍点]となるのである。
[#ここから1字下げ]
絶食[#「絶食」に傍点]と断食[#「断食」に傍点]
[#ここから2字下げ]
┌客観的事実
└主観的意義
[#ここで字下げ終わり]

 四月十一日[#「四月十一日」に二重傍線] 曇――晴。

藪鶯がしきりに啼く、だん/\晴れてくる。
ふと鏡をのぞいて、自分の老顔[#「自分の老顔」に傍点]に驚いた!
身辺整理。
シヤガが咲きだした、仏前に供へる、木の芽、草の芽。
秋田蕗が若葉をかゞやかにひろげだした。
――ここに改めて、W店夫妻にお礼を申上げる。

 四月十二日[#「四月十二日」に二重傍線] 曇。

待つてゐるのに屑屋さんが来てくれない、違約といふことは、いかなる場合にも不快だ。
身辺整理をつゞける。――
いよ/\覚悟をきめた、私は其中庵を解消して遠い旅に出かけよう、背
前へ 次へ
全34ページ中25ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング