日田は木どころ、製材所が多い、なか/\大規模だ、産物ハ焼杉下駄、名物ハ鮎、うまいなうるかは。
飲食店、宿屋料理屋が多い。

水郷日田[#「水郷日田」に傍点]、夏から秋が殊に日田!

日田のよいところは――私にうれしいのは――水がゆたかで酒がやすい、たへがたいのは風のふくこと。
霧はわるくないが(底霧とよばれてゐる)。

父と子、子と父。――

 三月廿四日 曇――晴、日田。

どうもお天気がはつきりしない、現代の社会そのものゝやうに!
アンゴラ兎。
淡窓先生墓所、長生園。
頼山陽先生淹留の故宅、如斯亭。
ふぐ料理とはどうかな、川魚料理とはよいが。
ある家の白木蓮まんかい。
川、川、水、水、酒、酒。
日の隈公園、月の隈公園、星の隈公園。
銭渕橋、河原のブールバール。
製材所風景。
[#ここから3字下げ]
  馬酔木居
いつぽんかたすみのみつまたのはな
川風さむみおちつかないてふてふ
水車はまはる泣くやうな声だして
  日田
水じゆうわうに柳は芽ぶく
山ざくら人がのぼつて折つてゐる
藪の椿の赤くもあるか
みちがわかれるさくらさく猿田彦
花ぐもりいういうとして一機また一機
[#ここで字下げ終
前へ 次へ
全34ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング