練で電燈は消されてしまつたので、一杯ひつかけてそのまゝ寝た、夜中に、トタン屋根をたゝく雨音に旅愁を感じた。
里程の主観的意味[#「里程の主観的意味」に傍点](徒歩の苦楽)。
客観的には一里でも主観的に二里の場合もある。
里程観念[#「里程観念」に傍点]。
小学生が比較的に正しい。
日出生台《ヒヂオダイ》とはよい地名。
田舎の人は総じて深切だけれど、時として不深切きはまることもある、今日はその不深切のために半里ばかり歩き損した。
その山近く住んでゐて、その山の名を知らない、のんき[#「のんき」に傍点]といふか、まぬけ[#「まぬけ」に傍点]といはうか!
老梅が咲き満ちてゐた、しづかに、しづかに、野の聖のやうに(廿二日)。
追憶の道[#「追憶の道」に傍点]。――
人間のいやしさ、きたなさを痛切に感じる、肉体的に、生理的に人間の臭さ[#「人間の臭さ」に傍点]がたへきれないやうにさへ!
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水分峠
枯山あまねく日のあたる鶯うたふ
のどけさ仔牛が乳房をはなれない
はれ/″\山はむつちりよこたはる
ふと見れば足にふまれてつく/\し
蕗のとうかたまつて山ふところに
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