り方々を見物する、人出が多い、恵まれた日曜だ。
波止場に立つて出港するすみれ丸[#「すみれ丸」に傍点]を見送り、入港するあかつき丸[#「あかつき丸」に傍点]を迎へる。
夜も散歩、どてら姿が右徃左徃する。
今日も破戒した、シヨウチユウを飲みアワモリを飲んだ、アワモリ屋のおかみさんは私の顔を覚えてしまつて(さすがに商買[#「買」に「マヽ」の注記]だ)、小海老のてんぴ[#「ぴ」に「マヽ」の注記]ら一片を下物としてサービスしてくれた!
近来、視力の減退が著しいことを感じる、栄養不良のためか、老衰のためか、そのどちらでもあらう。
――別府三泊は長過ぎた、気分も倦怠したし旅費も乏しくなつた、明朝は降つても照つても立たう。
今夜はなか/\睡れなかつた。
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別府埠頭
春風のテープもつれる別れもたのしく
出てゆく汽船《フネ》の、入りくる汽船の、うらゝかな水平線
[#ここで字下げ終わり]
三月廿一日 曇、風雨となつた、由布院。
朝湯はよいな、けさは朝酒を遠慮した。
お彼岸の中日といふので朝御飯は小豆飯[#「小豆飯」に傍点]、それにも少年の追憶をそゝられる、いよ/\八時出立、
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