[#「断食」に傍点]とはいへない!)であるが、上海では毎日窮民が何百人も凍死餓死するさうだから、それを考へると、こんなことは何でもない。
午後、寝てゐたけれど、やりきれなくなつて出かける、W店で一杯ひつかけた元気でF店へ行き米を借らうとしたが娘一人で話がまとまらない、さらにN店へ飛びこみ、また一杯ひつかけて、愚痴をならべて主人から米代若干借ることが出来た。……
今年最初の羞恥だ[#「今年最初の羞恥だ」に傍点]!
米と麦とを持つて戻り、ほつとしてゐるところへ学校の給仕が樹明君の手紙を持つて来た、こたえた、私は何と答へよう、かう書くより外なかつた、それがせいいつぱいの返事だつた[#「せいいつぱいの返事だつた」に傍点]。――
……忘れてもゐません、捨てゝもおきません、どうぞあてにしないで待つてゐて下さい。……
あゝ金が敵の世の中である、自他共に誰もが金に苦しめられてゐる、跪いてゐる、あゝ。
うどん一杯、何といふうまいうどんだつたらう!
餅のうまさは何ともいへない!
よく食べてよく睡つた。
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   事変俳句について[#「事変俳句について」に白三角傍点]
俳句は、ひつきよう
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