昼寝した、すまないと思ふ。
帝人事件判決が下つた、被告全部無罪、私たちには事件の真相はつかめないけれど、割り切れないもの[#「割り切れないもの」に傍点]があるらしい、その割り切れないものは現社会の癌[#「現社会の癌」に傍点]だらう!
おだやかに昇る月を観た、よかつた、よかつた。
寝苦しく胸苦しかつた、粗食大食[#「粗食大食」に傍点]のためか!
十二月十八日[#「十二月十八日」に二重傍線] 曇、時雨。
雨にら[#「にら」に「マヽ」の注記]しい、ぬくすぎる、ばら/\雨が落ちだした。
身心平静。
私は生活苦[#「生活苦」に傍点]といふよりも生存苦[#「生存苦」に傍点]になやまされてゐる、それではあまりにみじめだ。
朝、めづらしくこゝまで行商人がやつて来て、反物はいらないかといふ、御苦労さん、反物どころか、食べる物がなくなつて困つてゐる! それもこれも不景気の反映だらう。
世界歴史に燦然として光輝を放つべき南京入城式の壮観が、今日の新聞では写真と共に色々報道されてゐる、ありがたいニユースであつた。
濡れてかゞやく枯草のうつくしさよ[#「濡れてかゞやく枯草のうつくしさよ」に傍点]、観れば観
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