時雨。

けさは芋もなくなつて、お茶ばかりすゝつてすました。
飢は緊張する[#「飢は緊張する」に傍点]、餓えてます/\沈静、いよ/\真摯[#「真摯」に白三角傍点]。
頭痛がするので臥床。
お茶のあつさよ、うまさよ、かうばしさよ。
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天青地白(ちちこぐさ)
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 十二月十一日[#「十二月十一日」に二重傍線] 晴。

めづらしくお天気になつた、沈欝気分やゝうすらぐ。
来書一通、岔君ありがたう、ほんたうにありがたう。
さつそく出かけて買物いろ/\。
七日ぶりに飯を味ふ[#「七日ぶりに飯を味ふ」に傍点]、うまいと感じるよりも[#「うまいと感じるよりも」に傍点]、ありがたいと思うたことである[#「ありがたいと思うたことである」に傍点]、御飯の御の字の意義を考へる[#「御飯の御の字の意義を考へる」に傍点]。
南京陥落、歓喜と悲愁とを痛感する。
久しぶりに、ほんに久しぶりに、ひとりしみ/″\一盞傾けた。
私もいよ/\一生のしめくゝり[#「一生のしめくゝり」に傍点]をつけるべき時機に際会した。
指が何故だか痛い、指一本のための不自由、不快、不甲斐なさ、全
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