り食べなかつたが――初めて解つた!
たかな六株植える、楽しみである、悔なき楽しみ[#「悔なき楽しみ」に傍点]!
睡れないし、燈火はないし、腹はへるしで、夜の明けるのがほんたうに待ち遠かつた。
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   其中雑感――
○衝動性変質、自虐症[#「自虐症」に傍点]
○孤独癖
○自然的
○断食、絶食
○頽廃美
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 十二月八日[#「十二月八日」に二重傍線] 曇。

朝は芋をお茶受にして渋茶何杯でもすゝつた、昼も夜もまた、芋々芋々。
多々桜君罹病入院のたより、そんな予感がないでもなかつたが、気にかゝる、早く快くなつて下さい。
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病中は何もかも投げだして物事に拘泥しないことが第一大切だと思ひます、……のんきにのんびりと句でも作ることです。
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南京まさに陥落しようとして、降伏勧告! 城下の盟は支那人としてさぞ辛からう、勝つ者と負ける者!
暮羊君の奥さんから十銭借りて街へ出かける、切手四銭、ハガキ二銭、そしてなでしこ四銭。
日が暮れるとすぐ寝床にはいつた、燈火がなくては寝て考へるより外はない。
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