つそくお悔に行き会葬しなければならないのだけれど、それが出来ないので、仏壇に香を※[#「火+(麈−鹿)」、第3水準1−87−40]きお経をあげて、ひとりひそかに冥福を祈つた。
昨日も今日も郵便が来ないが、私はぢつと待つてゐる、それだけ私も落ちついて来たのだらう。
身辺整理、整理しても整理しきれないものがある。
頭痛が堪へがたいので臥床、どうやら風邪をひいたらしい。
知足安分[#「知足安分」に傍点]、――これが私の生活信条である。
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年はとつても年寄にはなりたくない[#「年はとつても年寄にはなりたくない」に傍点]、――誰でもがかう望むだらう。
年寄になつてはもう駄目だ。
情熱のないところに創作はない[#「情熱のないところに創作はない」に傍点]。
[#ここで字下げ終わり]

 十二月三日[#「十二月三日」に二重傍線] 時雨。

第五十五回の誕生日!
郵便は来たけれど、期待する手紙は来なかつた。
新聞を読み/\、新聞は有難いと思ふ。
寒波が襲来したさうだが、寒い/\。
終日無言、酒はないけれど米はまだあるので、落ちついて読書した。
夕方、一杯やりたくなつたが、ぢつとこら
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