破産の苦悩[#「性格破産の苦悩」に傍点]に堪へきれないのだ。
古くさいな!
古い新らしいは問題ぢやない、ウソかホントウか[#「ウソかホントウか」に傍点]、それが問題だ。
それもよからう。
……ウソがホントウになり[#「ウソがホントウになり」に傍点]、ホントウがウソになる[#「ホントウがウソになる」に傍点]。
私の生活はメチヤクチヤだ。
それで。――
生活難ぢやない、生存難だ、いや、存在難[#「存在難」に傍点]だ! 生きる死ぬるの問題以前の問題だ。
[#ここで字下げ終わり]

 十一月廿一日[#「十一月廿一日」に二重傍線] 時雨。

めつきり冬らしくなつた。
めつたにないことであるが、頭が重苦しい、断酒五日[#「断酒五日」に傍点]にわたるせいかも知れない。
終日無言[#「終日無言」に傍点]、時雨を聴き枯草を観る[#「時雨を聴き枯草を観る」に傍点]。
林五君に、そして緑平、澄太、比古の三君に懺悔謝罪状を送る。……
天蒼々地茫々、そして人漠々。
[#ここから2字下げ]
林伍君に――
[#ここから4字下げ]
――所詮、無能無力、そして我がまゝ気まゝ、これでは苦しむのがあたりまへでせう、みんな身
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