体と部分との緊密なる接触[#「全体と部分との緊密なる接触」に傍点]を考へる。
午後、湯田へ行き、温泉で、連日の垢と汗とを流した。
S屋に泊つて、ゆつくり休養した。
蕎麦がうまかつた、山口の山はうつくしい。
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陰部の両面的意義
排泄[#「排泄」に傍点]と交接[#「交接」に傍点]、そしてその快感[#「快感」に傍点]!
酔へばあさましく
酔はねばさびしく
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十二月十二日[#「十二月十二日」に二重傍線] 晴。
小春日、好い日であつた、朝帰庵。
つゝましく読書。
風邪をひいたとみえて(私も人並に!)、洟水がぽたり/\落ちて困つた、老を感じた。
今晩は何日ぶりかで、ランプをともすことが出来た。
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或る日の出来事――バスの中で
パン屑、インテリ女性
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十二月十三日[#「十二月十三日」に二重傍線] 好晴。
けさは少々朝寝、それだけよくねむれたわけ。
降霜、寒冷も本格的になつた。
霜晴れの太陽のまぶしさ、小鳥の声のうれしさ。
私の好きな藪椿がもう咲いては落ちだした。
夕方、ポストまで、ついでに焼酎と蝦雑魚とを買うて戻つて飲んだり食べたり、御馳走々々々。
――物に触れ事につれ、ともすれば心が動く、心の芯[#「心の芯」に傍点]は動かないつもりだけれど、やつぱり私は落ちつかない。――
からだがとかくよろめく[#「からだがとかくよろめく」に傍点]、アルコールの害毒と老衰とを感じないではゐられない。
アルコールのおかげで快眠、夢中大きな鯉を捕へた、何の前兆か、ハツハツハツ!
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『わが冬ごもりの記』
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十二月十四日[#「十二月十四日」に二重傍線] 晴、曇、時雨。
午前中は申分のない小春凪だつた。
朝酒一本(昨夜の残りもの)、うまいな、ありがたいな、いや、もつたいないな、ほんに朝湯朝酒朝……。
昭和十二年十二月十三日夕刻、敵の首都南京城を攻略せり、――堂々たる公報だ
なつかしい友へたより二通、澄太君へ、無坪君へ。
午後は買物がてら散歩。
今晩から麦飯[#「麦飯」に傍点]にした、それは経済的[#「経済的」に傍点]といふよりも生理的[#「生理的」に傍点]な理由による(といつても、新聞代位は倹約になるが)、私はだいたい食べすぎる[#「食べすぎる」に傍点](飲みすぎることはいふまでもなからう!)、とかく貧乏人の胃袋は大きい、ルンペンは殆んど例外なしに胃拡張的だ、私は自分でも驚くほど大食だ、白飯をぞんぶんに詰め込むと年寄にはもたれ気味[#「もたれ気味」に傍点]になるが、大麦飯[#「大麦飯」に傍点](米麦半々)ならば腹いつぱい食べてもあまり徹へないのである、あゝ食べることはあまりに痛切だ[#「あゝ食べることはあまりに痛切だ」に傍点]。
晩は久しぶりの豆腐で、おいしい麦御飯を頂戴した、張り切つた腹を撫でゝは結構々々!
夜、上厠後の痔出血で閉口した、焼酎と唐辛とのせい[#「せい」に傍点]だらう、老人は強い刺戟を慎むべし。
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――わが南京攻囲軍は十三日夕刻南京城を完全に占領せり。
江南の空澄み渡り日章旗城頭高く夕陽に映え皇軍の威容紫金山を圧せり。――
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[#地付き](上海日本海軍部公報)
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大空澄みわたる
日の丸あかるい涙あふるる (山生)
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十二月十五日[#「十二月十五日」に二重傍線] 快晴。
早起、身辺整理。――
小春日和のうらゝかさ、一天雲なし、気分ほがらか。
書かなければならない、出さなければならない手紙があるのだけれど、今日も果さなかつた、播いたものは刈らなければならないのに、私はどうしてこんなに我がまゝなのだらう。
終日独坐[#「終日独坐」に傍点]、無言行[#「無言行」に傍点]。
良い月夜だつた、霜月十三夜である。
十二月十六日[#「十二月十六日」に二重傍線] 霜晴。
昨夜の夢の名残が嫌なおもひをさせる。……
その後[#「その後」に傍点]一ヶ月経つた、私はいよ/\落ちつく。……
やうやくにして、長い悲しい恥づかしい手紙を書きあげて、さつそく投函した、健よ健よ許してくれ許してくれ!
沈欝たへがたきにたへた、あゝ苦しい。
落ちたるを拾ふといふよりも、捨てられたる物を生かす気持[#「捨てられたる物を生かす気持」に傍点]で、また一つ拾うて戻つた。
大根一本二銭、おろしたり煮たり漬たり、なんぼ大根好きの私でも一度や二度では食べきれない。
今夜も良い月夜、玲瓏として冴えわたる月光がおのづから天地の悠久[#「天地の悠久」に傍点]を考へさせた、いつまでも睡れなかつた。
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悠久な時の流れ[
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