た、山頭火はまだ山頭火を失つてはゐなかつた!
腹工合がよくないので散歩、たうとう湯田まで歩いた、一浴して、そして一杯ひつかけて帰つた、まことによい散歩だつた。
[#ここから1字下げ]
シヨウユウライスよりもソルトライスがうまい! このうまさは貧乏しないと、飢えないと解らない。
[#ここで字下げ終わり]

 四月廿日[#「四月廿日」に二重傍線] 晴――曇。

季節のよろしさ、晩秋初冬ほどではないけれど、生き残つてゐるよろこびをよろこばせてくれる。
句稿整理。
松蝉がそこらで鳴く。
裏山を歩く、蕨でも採るつもりだつたが、それは見つからなくて、句を二つ三つ拾つた。
午後また近郊散歩。
溜息――春のなげき、天にも地にも私にも。
今日は村の観音祭らしく、地下の老若男女が御馳走を持つて山へ行く、――それを眺めてゐて、私は何か寂しかつた。
無感傷主義[#「無感傷主義」に傍点]の境地に入れたら、どんなに落ちつけるだらう、……そして、……この身心のドライをどうしたらよいか。……
寝苦しかつた。
私はどこかへ移らう(湯田が望ましい)、居は気を移すといふ、新らしい土地で新らしく生活しよう。
[#ここから1字
前へ 次へ
全110ページ中51ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング