一月十八日」に二重傍線] 曇。

ぬくい、うれしい。
うたゝ寝の夢のゆくへはいづこだらう。
今日はアルコールの誘惑に打ち克つことが出来た。
ポストまで出かける。
梅もよろしく椿もよろしく水仙もよろしく。

 一月十九日[#「一月十九日」に二重傍線] 曇。

しづかな雨、しづかな心。
郵便は来なかつた。
南枝落北枝開[#「南枝落北枝開」に傍点]、これが宇宙の相である。
敬君来庵、樹明君も、暮羊君もまた、にぎやかな酒宴が初まつた、愉快々々。

 一月廿日[#「一月廿日」に二重傍線] 曇。

毎日の冬ごもりには困るけれど詮方ない。
朝がへり、公明正大だ。
身辺整理。
昨夜の今朝で、さすがの山頭火も少々ぼんやりしてござる。
ポストまで。
梅の花ざかり。
濡れてかゞやく枯草のうつくしさよ。
Nさん来訪、Fさんといつしよに。
飲めば酔へる幸福を祝福すべし[#「飲めば酔へる幸福を祝福すべし」に傍点]。
年賀状をぼつ/\認める、のんきだね。
夕月がほのかに照る、白船君だしぬけに来庵、これはこれはとばかり話しこんでしまつた、八時の汽車へ見送る、お土産の吟醸をいたゞく。
ふくろうが啼く、さびしいと思ふ。

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