。
草が芽吹き、鴉が啼き、人間が酔うてさまよふ。
[#ここから1字下げ]
┌飯と酒
│ 飯のありがたさ
└塩と味噌
塩のよろしさ
満腹と脱糞
[#ここで字下げ終わり]
三月一日[#「三月一日」に二重傍線] 曇。
春は来たが、私は冬だ。――
終日不動無言。
身心頽廃。
せめて美しく滅ぶべし。――
三月二日[#「三月二日」に二重傍線] 晴。
雲雀、菜の花、小虫がしきりに飛ぶ、――春だ。
放下着、一切放下着。
不思善不思悪、空々寂々。
午後、五日ぶりに外出する、無燈火にたへられなくなつたから。
Kさんから本を借り、コロツケを貰ふ。
三日ぶりに点燈、だいぶ落ちついて来た。
生きてゐればゐるだけ、私は私の無能無力を感じるだけである。……
三月三日[#「三月三日」に二重傍線] 雨。
春雨だ、間もなく花も咲くだらう。
亡母祥月命日。
沈痛な気分が私の身心を支配した。
……私たち一族の不幸は母の自殺[#「母の自殺」に傍点]から始まる、……と、私は自叙伝を書き始めるだらう。……
母に罪はない、誰にも罪はない、悪いといへばみんなが悪いのだ、人間がいけないのだ。……
身辺整理。
矛盾
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