カン》らしい寒気。
暮れて節分の鐘が鳴り出した、いろ/\考へさせる声だ、宮市の天満宮は賑ふだらう、思ひ出は甘酸つぱい哀愁だ。
八時頃から出かける、参詣人がつゞいてゐる、境内を探したが樹明君を見つけることが出来ない、約束の場所に約束の時間に一時間近くも待ちうけたが、たうとう逢へなかつた、逢へなかつたことは残念だが、逢はなかつた方がよいやうにも思ふ、とにかくこれからは夜の外出はやめることにしよう、寒くて、そして淋しくてやりきれないので、駅へまはつて(そこまで行かないとマイナスが利かない)、熱いのを数杯ひつかけて帰庵した。
身心共に寝苦しかつた。
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┌生活的事実
└芸術的真実[#「芸術的真実」に傍点]
┌芸道[#「芸道」に白三角傍点]
│芸のための芸
└芸そのものを磨く

┌君は都会人で都会にゐる
│都会の風物をうたひたまへ
└都会人としての君をうたひたまへ
┌私は田舎にゐる田舎者だ[#「田舎にゐる田舎者だ」に傍点]
│天然自然の田園をうたうて
└自分を出すより外ないではないか
┌君のビルデイングは私の草屋だ
└私の雑草は君のアドバルーンだらう
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