よろしくない、不摂生がリヨウマチを招いたのだらう、私はそれをむしろ喜ぶ、歩行の不自由は(不能となつては困るけれど)私におちつきを与へるだらう、私は酔うて彷徨する悪癖に悩んでゐるからである、不幸な幸福[#「不幸な幸福」に傍点]とでもいふべきか。
私は私の孤独[#「孤独」に傍点]を反省する、それは孤高[#「孤高」に傍点]でなくて孤寒[#「孤寒」に傍点]である、私は孤立[#「孤立」に傍点]を誇るほど思ひあがつてはゐないが迎合[#「迎合」に傍点]に甘んずるほど堕落してもゐない。
在るべきものが――無くてはならないものが――米が炭が石油が在る幸福と喜悦と、そして感謝。
私は幸福だ[#「私は幸福だ」に傍点]、少くとも今日の私は幸福である[#「少くとも今日の私は幸福である」に傍点]。
夜の明けしらむまで不眠、しかし今夜の私には読みたい本があり、灯火があつた。……
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
※[#二重四角、26−1]男は欲しくないが、子供が欲しいといふ女が出現しつつあるといふ。
 女は欲しがつて子供を欲しがらない男が存在することはたしかだ。
 これも現代相の一面である。
※[#二重四
前へ 次へ
全110ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング