ねる、ビールと水密[#「密」に「マヽ」の注記]桃の御馳走になる、感謝々々、おかげで、よい睡眠をめぐまれた。

 七月三十一日[#「七月三十一日」に二重傍線] 晴。

どうやら晴れさうな、人も樹木もよろこびうごく。
貧乏はつらいかな、銭がないために、人間はどんなに悩み苦しむことか。――
この寂しさはどうしたのだらう!
塩と胡瓜とを味ふ、塩はありがたい、それをこしらへてくれる人に感謝する、胡瓜はうまい、それを惜しみなくめぐんでくれる自然に感謝する。
モウパツサン短篇集を読む、モウパツサンはわるくないと思ふ、チヱーホフほど親しくは感じないけれど。
先月はあれほど緊縮して暮らした、今月もこれほどつましく生活費を切り詰めた、しかし赤字つゞきである(もつともちよい/\一杯ひつかけるから、それが浪費といへばいへるけれど、私にあつては、酒は米につぐ生活必需品である!)。
かうして生きてゐてどうなるのか、どうすればよいのか、今更のやうに、自分の無能無力が悲しかつた[#「自分の無能無力が悲しかつた」に傍点]、腹立たしい。
乞食になりきれない弱さ、働いて食べる意力のないみじめさ。
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