、そして買物いろ/\、これだけあれば当分凌げる。……
身辺整理、私の変質的発作[#「変質的発作」に傍点]は整理出来ないものだらうか、否、きつと整理してみせる。
つゝましくすなほな日[#「つゝましくすなほな日」に傍点]であつた。
午後、またポストへ、ついでに入浴、髯を剃り爪を切り、さつぱりした。
樹明来信、宿直だから来遊を待つ、おもしろいニユースがあるといふ。
六時のサイレンを聞いてから出かける、ニユースといふのはKさんの事だつた(彼に幸福あれ)、いつものやうに夕飯をよばれ(無論、般若湯も!)十時頃帰庵。
今日の新聞記事、――無想庵が巴里に於ける話は悲しかつた。
今日は茄子と胡瓜とを植ゑた。
人の短を説く勿れ[#「人の短を説く勿れ」に傍点]、己の長を語る勿れ[#「己の長を語る勿れ」に傍点]、合掌[#「合掌」に傍点]。
[#ここから1字下げ]
層雲はまし[#「まし」に「マヽ」の注記]く第二期[#「第二期」に傍点]に入つた、今後の運動は若い人々のはたらきである、第一期[#「第一期」に傍点]の仕事に残つてゐるものがあるならば、それは老人たちのつとめである。
層雲俳句に対していつも慊らなく感じることは、野性味[#「野性味」に傍点]のないことである(野心的な句[#「野心的な句」に傍点]はさうたう見うけるが)、小さいナイフのやうな句[#「ナイフのやうな句」に傍点]ばかりで大鉈のやうな句[#「大鉈のやうな句」に傍点]がない。
[#ここで字下げ終わり]

 六月九日[#「六月九日」に二重傍線] 曇――晴。

やつと霽れた。
天地荘厳――私は沈欝。
――せめて、余生をなごやかに送りたいと思ふ。
菜を漬ける、何といつても食料品として最も安価なのは塩だ(私は一年間に十五銭の塩を使ひきれない)。
読書はよいな、今日も悠々として書を読んで暮らした。
石油買ひがてら散歩、或る畠の畔からコスモスの苗を抜いて来て植ゑる、この秋は庵のまはりが美しいだらう。
途上に句はいくらでも落ちてゐる、それを拾ひあげることが出来るのは俳句的姿勢だ。
心いよ/\深うして表現ます/\直なり[#「心いよ/\深うして表現ます/\直なり」に傍点]、――この境地は句に徹しようと不断に精進するものでないと、よく解るまい。
[#ここから1字下げ]
塩鮭のあたま
[#ここから2字下げ]
あのルンペンはどうしてゐるだらうか。

[#こ
前へ 次へ
全55ページ中38ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング