、二人でプラツトに魚眠洞さんを迎へ、そして別れた、うれしくもありかなしくもあつた。
私はTさんMさんに誘はれて湯田へ、いろ/\御馳走になりつゝ明るいうちから更けるまで歓談した、そして名残は尽きないけれど零時の汽車で見送つた。
今日はほんたうにうれしいありがたい日だつた、そしてさびしいかなしい日でもあつた。……
どうにもならないかなしさは竹原のKさんからの手紙だつた、Kさんの心情、奥さんの心情がひし/\と胸にしみいつた、Kさん、かなしいことをいはないで、早く快くなつて庵を訪ねて来て下さい、私は待つてゐます。
Tさん、そしてKさん、おかげで私は助かりました、ありがたう、ありがたう。……
何という私の弱さ、あさましさ、だらしなさ、……私は私を罵り鞭打ちつゝ泣いた。……
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婦人公論十一月号所載の、三浦環女史の自叙伝を読んで、彼女の芸術に対する情熱と自信とにうたれた。
自分の道[#「自分の道」に傍点]を精進するだけの情熱と自信[#「情熱と自信」に傍点]とはいつも持つてゐたい、万一それを失ふならば、彼が本当の芸術家であるならば、狂か死[#「狂か死」に傍点]があるばかりである。
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