涼しい。
夕飯は茶粥、大根がうまくなつた。
今夜もNさん来庵、とりとめもない雑談しばらく。
どうやら風邪をひいたらしい、胸の中が何だか変である、痛みさへしなければ、起居が不自由にさへならなければ、軽い疾病は私にとつて救ひの神[#「救ひの神」に傍点]だらう!
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◎今日の太陽[#「今日の太陽」に白三角傍点]
最も古くして、そして、最も新らしいもの。
私の幸福は昨日の太陽[#「昨日の太陽」に傍点]ではなく、また、明日の太陽[#「明日の太陽」に傍点]でもない。
私の句集の題名にしたい。
◎道中記[#「道中記」に傍点]
北陸道中記、東海道中記
春の道中記、夏の道中記
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十月十八日[#「十月十八日」に二重傍線] 曇。
野分、裏藪が騒々しい。
眼が覚めると寝てはゐられなかつた、今日はうれしい日だ、緑平老が訪ねて来てくれる日だ!
お茶が沸いて御飯が炊けて、何もかも済んでもまだ夜は明けきらなかつた、ずゐぶん早起きしたものだ。
石蕗を活け代へる、いゝなあ。
ちよいと学校まで、樹明君に逢ひ、新聞(昨日の分、今日は休刊)を読み、そして一先づ帰庵。
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