るだらう[#「山頭火の真骨頂は今後に於て発揮せられるだらう」に傍点]。
一日一日、一句一句、一歩一歩。
[#ここで字下げ終わり]

 十月十六日[#「十月十六日」に二重傍線] 晴、お天気がようつづく。

このごろの飯のうまさよ、飯そのもののうまさだ[#「飯そのもののうまさだ」に傍点]。
一粒の米にも千万無量の味が籠つてゐる、まことに粒々辛苦、ああ、お米[#「お米」に傍点]のありがたさよ。
何もお菜がないから、けふもシヨウユウライス!
おもひがけなく、S子さんと彼女の友達とがM老人に案内されて来てくれた、まつたくもつて珍客来[#「珍客来」に傍点]だ、おかまひは出来ないが、渋茶を飲んだり熟柿を食べたりして貰ふ、むろん雑草風景は十分に味つて貰ふ。
三人打ち連れて、駅前のH食堂へはいる、私は酒と刺身と焼松茸とを御馳走になる(世はさかさまとなりにけりだ)、松茸は初物、おいしかつた。
それからが少々いけなかつた、例の如く彷徨した、少々みだれた、……五時頃帰庵、誰か来たらしいと思つたら、Nさんが昨夜話しあつた約をふんで、釣つた沙魚十数尾を持参してくれたのだつた、さつそく料理して、うまい夕飯を食べた。
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