庵中無一物
 酔うて戻つてさて寝るばかり
[#ここで字下げ終わり]

 四月十三日[#「四月十三日」に二重傍線] 好晴。

久しぶりに、ほんたうに久しぶりに畑仕事、土を耕やし、草をぬき捨て、大小便をかけて、いつでも胡瓜や茄子やトマトや大根や、植えられるやうにして置く。
酒はあるけれど飲まなかつた[#「酒はあるけれど飲まなかつた」に傍点]、飲みたいのを飲まないのではない、飲みたくないから飲まなかつたのである、私は昨日までしば/\飲みたくない酒[#「飲みたくない酒」に傍点]を飲んだ、酔ひたいために飲んだのである、むろんにがい酒[#「にがい酒」に傍点]だつた、身も心もみだれる酒だつた。……
過去一年間の悪行乱行が絵巻物のやうに、フイルムのやうに展開する、――それは破戒無慚な日夜だつた。……
私は何故死なゝかつたか、昨春、飯田で死んでしまつたら、とさへ度々考へた。……
[#ここから2字下げ]
我昔所造諸悪業
皆由無始貪瞋痴
従身口意之所生
一切我今皆懺悔
[#ここで字下げ終わり]
一切我今皆懺悔、そして私は新らしい第一歩[#「新らしい第一歩」に白三角傍点]を踏み出さなければならない。――
[#
前へ 次へ
全186ページ中57ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング